いかにして「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」か。


教育基本法の改正により、教育の目標の一つとして「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」ことが示れました。いわゆる「愛国心」の問題としてメディアなどでも取り上げられていたものです。

「伝統教育」は、社会的連帯の資源や、地域的な条件とマッチングするための様々な手法。文化発信の資源として捉える事が出来るかと思います。
イメージの中の「伝統文化」について学習することが、「伝統教育」にはなり得ないでしょう。国語教科書の中に「隠れたカリキュラム」として「古き良き日本」のイメージが描かれていることが『国語教科書の中の「日本」』*1で指摘されていますが、提示されたものを学習するのではなく、リソースとしての文化について、その操作方法を習熟すること(伝統の取捨選択をする能力を含む)こそがよき「伝統教育」であると考えます。

そのためには、「確かな情報として、文化を理解する」「「我が国」の境界線を理解する」「現在にも使える文化を選択する」「現在でも使用可能な形に加工する」の四つのステップが必要になると考えられます。

「我が国」の境界線が問題になるのは、文化的な差異と現在の国境にズレがあるためです。アイヌ琉球は、地理的にいえば現在は日本の内側にありますが、文化的には「やまと」とは異なる文化圏に存在していました。また、「やまと」の内側においても各藩ごとに地域差があるばかりでなく、僧、神主、武家、公家、定住民と流浪民、漁村民と山人、都市住民などでそれぞれ異なる文化を享受していました。

現在は文化的な危機の時代です。言語の消滅、文化の画一化などが急速に進んでおり、それらを保護しないことは、人類の資源の消滅と言えるのでしょう。

*1:

国語教科書の中の「日本」 (ちくま新書)

国語教科書の中の「日本」 (ちくま新書)