英雄的な滝沢朗は救世主になれない

アニメ「東のエデン」が面白い。
ノイタミナ枠でやっているアニメで、ある日突然、ノブレス携帯という、100億円がチャージされ、ジュイスというコンシェルジュに繋がる魔法のような携帯を託された12人が、日本を救わなければ殺される、というゲームに巻き込まれていく話なんだけれども、放送も終盤で主人公の滝沢朗が一度日本を救うことに失敗したことが示唆されている。
ノブレス携帯というのがとても現代的な力の表象で、神山監督が随分強度のある設定を作り出したものだと思う。*1
物語の中でノブレス・オブリージュ…持てるものの義務を、多くのセレソンは、私利にせよ義憤にせよ、世界を思うがままにしたいという欲望のままに解釈して様々に行動を起こす。白鳥黒羽は凶悪犯罪者のジョニー狩りを続け、火浦元は福祉施設を作り上げて死ぬ。そしては結城亮は東京にミサイルを落とそうとする…
滝沢朗はその行動を阻止しようとしたが、協力した仲間と助けたものにさえ裏切られた、という。何故滝沢朗は裏切られたのだろうか。
ジュイスは「ノブレス・オブリージュ。あなたが救世主たらんことを」と語る。しかし実はここが一番の罠ではないだろうか。未だストーリーの途中で、明らかにされていないが、おそらく滝沢は持てるものとしてニート2万人を助け、裏切られたのだ。それは、持てるものが超人的に判断して世の中を動かすことの不可能さを示してはいないだろうか。
滝沢朗が救世主になれるのは、ニート2万人の上に立つものではなく、それらのハブに‐ひいては日本人全体のハブになったときなのではないか。つまり、「救世主」であることを望まれても、独断専行せずに、「みんなで世界を救える人物」こそが、真のセレソンなのだ。*2

*1:実はこのノブレス携帯が鼻血が出るほど欲しい(笑)のだけど、物語の中で日本を救うべきセレソンたちが余りにどうしようもないので、視聴者はやきもきとさせられる。それだけ日本を救わなければ沈んでいくのだろうという危機感にリアリティーがある。

*2:とかいいながら予告で「この国のお様」になる気満々っぽいんだけど・・・